禁止物質と禁止方法とは?
禁止表の構成
禁止表は、禁止される場面と競技により、以下の3つに区分され構成されています。
- 「常に」禁止される物質と方法
➡ 競技会検査と競技会外検査、どちらで検出されても違反の対象となる - 「競技会(時)において」禁止される物質と方法
➡ 競技会検査で検出された場合、違反の対象となる - 「特定競技において」禁止される物質と方法
➡ 一部の競技でのみ禁止される物質・方法
競技会(時)とは(Code定義より):
競技会(時)とは、アスリートが参加する予定の競技会の前日の真夜中(23時59分)に開始され、当該競技会及び競技会に関係する検体採取手続の終了までの期間をいう。(ただし、WADAから異なる期間として承認された競技会においては異なる期間が適用される。*
)
* JADA訳注:国際競技連盟が特定の競技のために異なる定義が必要であることの説得力ある正当化事由を提供した場合には、WADAは当該競技のために代わりの定義を承認することができます。WADAが当該承認を行った場合には、当該特定の競技について、全ての主要競技大会機関はかかる代わりの定義に従うものとします。
競技会外とは(Code定義より):
競技会(時)以外の期間をいう
禁止表の分類
ここでは禁止表の分類を示します。より具体的な物質名については、「禁止表の注意点」と併せて、「禁止表国際基準」にて確認ください。
禁止表の分類と物質をより理解するための補助として、その物質を治療薬として使用する可能性がある代表的な病名をWADAが公開しています。
以下の一覧には、WADAが公開する代表的な病名を掲載しています。
これらの病気を治療するための薬や処置には、禁止物質や方法が含まれる可能性があるため注意が必要です。
ただし、どの分類においても病名や治療のみに限定するものではありません。
- 「常に(競技会(時)及び競技会外)」禁止される物質と方法
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S0 無承認物質
禁止表の以下のどの分類にも対応せず、人体への治療目的使用が現在どの政府保健医療当局(日本の場合は、厚生労働省)でも承認されていない薬物(例えば、前臨床段階、臨床開発中、あるいは臨床開発が中止になった薬物、デザイナードラッグ、動物への使用のみが承認されている物質)は、常に[競技会(時)及び競技会外]で禁止
S1 蛋白同化薬
男性性腺機能低下症等の治療薬など
S2 ペプチドホルモン、成長因子、関連物質及び模倣物質
貧血、男性性腺機能低下症、成長ホルモン欠乏症等の治療薬など
S3 ベータ2作用薬
気管支喘息そして他の呼吸機能障害等の治療薬など
S4 ホルモン調節薬及び代謝調節薬
乳がん、糖尿病、不妊症(女性)、多嚢胞性卵巣症候群等の治療薬など
S5 利尿薬及び隠蔽薬
心不全、高血圧等の治療薬など
M1 血液及び血液成分の操作
輸血、人工透析
M2 化学的及び物理的操作
静脈内注入/静脈内注射
M3 遺伝子及び細胞ドーピング
正常なあるいは遺伝子修飾した細胞の使用(幹細胞治療など)
- 「競技会(時)において」禁止される物質と方法
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S6 興奮薬
アナフィラキシー、注意欠如・多動症(ADHD)、感冒及びインフルエンザ様症状等の治療薬など
S7 麻薬
筋骨格(系)障害によるものを含む疼痛等の治療薬など
S8 カンナビノイド
S9 糖質コルチコイド
アレルギー、アナフィラキシー、気管支喘息、炎症性腸疾患等の治療薬など
- 「特定競技において」禁止される物質と方法
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P1 ベータ遮断薬
心不全、高血圧等の治療薬など
P1ベータ遮断薬は、【競技会(時)】に限って禁止。[*]の競技は、競技会外においても禁止
- アーチェリー(世界アーチェリー連盟:WA)*
- 自動車(国際自動車連盟:FIA)
- ビリヤード(全ての種目)(世界ビリヤード・スポーツ連合:WCBS)
- ダーツ(世界ダーツ連盟:WDF)
- ゴルフ(国際ゴルフ連盟:IGF)
- 射撃(国際射撃連盟:ISSF、国際パラリンピック委員会:IPC)*
- スキー/スノーボード(国際スキー連盟:FIS)- ジャンプ、フリースタイル(エアリアル/ハーフパイプ)、スノーボード(ハーフパイプ/ビッグエアー)
- 水中スポーツ(世界水中連盟:CMAS)-フリーダイビング、スピアフィッシング、ターゲットシューティングの全ての種目